スペイン最新鋭施設「再エネだけで電力供給の8割」

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固定価格買い取り制度(FIT)を積極的に活用し、再生可能エネルギー(再エネ)が充実しているスペイン。この国の再エネ比率は、ここ10年間で4倍以上に増加。2013年には約26%を占め、いまや原子力や石炭を上回り、首位をキープする。中でも風力発電が最も多く、設備容量で原発20基分を超えていた。

 特筆すべきは、再エネの普及で多様な電源構成を持つスペインでは、日本のような系統接続の保留問題が起きていないことだ。

 日本では14年9月、電力の安定供給が得られないとして、九州電力などが再エネの受け入れを保留した。スペインではこれだけ再エネを導入しているにもかかわらず、同様の事例は起きていない。

 すでに発送電分離したスペインで国内の送電業務を一手に任されるのは民間会社だ。

「我々は国内電力の細かな需給予測を日々行っています。その上で需給バランスを調整するため、火力と水力発電に関しては4秒ごとに出力調整を行うことができるのです」

 こう説明するのは、スペイン唯一の送電会社レッド・エレクトリカ・デ・エスパーニャ(REE)でシステム運営の責任者を務めるミゲール・ドゥビソン氏だ。

 マドリード郊外の本社内にある中央制御室を覗くと、国内のどの系統でどんな電源がどの程度発電しているのかリアルタイムでわかる巨大な表示盤があった。

 全国32カ所にある電力会社のコントロールセンターとこの場所を光ファイバーケーブルでつなぎ、すべての情報がオープンにされる。電力会社が情報を抱えてしまう日本とはだいぶ違う。

「太陽光や風力エネルギーは自然環境に左右される。そのため、スペイン気象庁のデータを使って綿密な発電予測を行っています。それでも電力需給の差は生まれます。そこで発電量の調整が容易な水力と火力発電にここから秒単位の指令を与えることで、可能な限り電力実需に合わせているのです」(ドゥビソン氏)

 既存の発電設備をいわば調整弁にして、再エネを無駄なく利用しているのだ。ドゥビソン氏によると、電力需給のリアルタイム処理ができるのは、世界でもここだけだという。

 さらに国全体の電力需要にも透明性を確保している。市場予測値、REEの予測値、実需の三つを折れ線グラフで単位時間ごとに表示。インターネットでも情報を公開している。

 訪問時、スペインの全電力供給のちょうど50%が再エネで賄われていた。「風力だけで65%、再エネ全体で80%を占めたこともある」(同)というから驚きだ。

 それ以上に増やすことも能力的には可能。だが、原子力発電など出力調整がすぐにできない電源のセキュリティーを保つ面から、再エネの供給を80%以上にすることは禁じられているという。

 REEは国の資本が20%入っているとはいえ民間企業だが、国家の電力供給を保障する責任を持たされている。ドゥビソン氏はこう言った。

「30年前にREEができる前はスペインも各電力会社がバラバラに送電をしていたため、電力供給に不安定な面がありました。ですが、発送電の分離が行われ、国主導で一元的に送電を管理する方針を打ち出したからこそ、ここまでできたのです」

(桐島 瞬/本誌・小泉耕平、上田耕司)

※週刊朝日 2015年1月16日号より抜粋 / dot.asahi.comより

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